• 福岡から高知へ。彼を駆り立てたもの…

     福岡生まれ、福岡育ち、現在福岡大学に通う西方俊宏さんが、高知で二週間におよぶインターンシップを選んだ理由は、周りで何事にも積極的に取り組む友人の姿を見たことと、強い衝撃を受けたある一冊の本との出逢いにあった。『日本でいちばん大切にしたい会社2』という大ベストセラー本だ。
      「人の育成に徹底的にこだわり、そこから生み出される日本随一の顧客サービス。何だかすごく心を揺さぶられるものがあって。凄い会社のヒミツというか秘訣みたいなものを、とことん吸収してやる!と思っていました」

    「考える」「発言する」「行動する」「反省する」

     ネッツトヨタ南国のインターンシップは二部構成。会議室で講義やディベート、グループディスカッションなどを通じて「考え、発言する」ことに徹する時間と、ショールームでの接客サービスや営業同行などでお客様やスタッフと関わることを通じて「行動し、反省する」という体験に徹する時間だ。
     「土曜日と日曜日に来店されたお客様のお子様に楽しんでいただくためのミニイベントを、インターンシップの学生たちで企画、運営するという機会をいただきました。これは本当に難しかった…。会議室で発表したり議論したりすることは得意ですが、いざショールームに立ってみると完全にアウェイな自分になってしまって…。積極的に動けなかったという以前に、何かに気付いても、一人で動く、みんなと違うことをするっていうことができない」
     その日の終礼では、学生と研修担当スタッフとで反省会が開かれた。「その反省を活かして二日目のイベントではかなり改善できたと思ったのですが…。二日目の反省会では『それは単に行動を修正しただけ。何も考えずにやっただけとも言える』と。『その成功は違う場面でも活かされるのか、再現性はあるのか』『自分の心の深いところで、行動をためらわせる、引っかかっている何かがあるのではないか』と…。考えたことないですよね。でも、そのあたりを考えていくんです。悩みますよね」
     「行動できなかった」という反省に対して、「行動するように頑張る」という対策を立て、一時的に行動を変えたとしても、それはインターンシップという特別な期間だからこそ実現する錯覚の世界。もちろん、それでも「できた」という達成感や「やったら気付いた」という体験学習効果はある。しかし、10年以上前からインターンシッププログラムの開発に努めてきたネッツトヨタ南国ではもうひとつ深いところに踏み込んでいく。「行動しない」という選択を生んだ価値観や無意識を学生と一緒に探っていき、その成長機会を逃した根本的な課題を発見してもらう。ネッツトヨタ南国のインターンシップ前半で「考え、発言する」ことに徹するのは、この後半の体験ベースの研修から、できるだけ多くの学びを得るための思考力を高めるトレーニングだ。

  • すごい会社、その期待は大きく外れた

     「数多くの本に紹介されている会社なので、何か『特別なこと』をしているだろうと期待して、特別な環境の中で自己改革したい!」と思っていたが、そんな意気込みや期待は大きく外れ、人生において「改革」や「革新」などあり得ない、ということを教わることとなった。
     同社の担当者は言う。「西方さんのイメージした『特別なこと』とは、ノウハウや仕組みなどの方法論。それさえ手に入れれば、仲間やお客様に喜んでいただける自分に生まれ変わり、会社が躍進すると信じて、たくさんの研修生や視察の方々が来られます。たしかに日本はその図式で高度成長を成し遂げましたので、今もそう考えたくなるものですが、そんな特効薬などありません。我々人間は、毎日少しずつ成長し、進化していく『生命体』です。自分らしい生き方、理想とする人生のイメージをもって懸命に働いていけば、昨日と同じような今日でも、微妙な変化を『感じる』ことができるようになります。その気付きをきっかけに、どうすればもっと仲間やお客様、地域に役立つことができるか…考え、悩み、対話し、決断し、行動することを継続していくことが大切なのではないでしょうか。その毎日を生きてこそ人は成長するということを、インターンシップ生には体感して欲しいですね」  「ショールームで、お客様から『ありがとう』と言っていただいたきっかけは、自分の何気ない小さな気配りでした。特別な知識でもなんでもなく、『喜んで欲しいな』というシンプルな想いがきっかけでした。社員の皆さんの動き方を見ても、サプライズや、何か特別な出来事を作ろうとするのではなく、人として当たり前のことをすごく大切にしている。自分はなにか根本的なところでボタンを掛け違えて考えていたような…」
     インターンシップ終了後、いまだ明確な答えが見つからず悩まし気な口ぶりではあるが、自分の人生、就職に向けてなにかしらのヒントを手に入れたせいだろうか、その表情はキラキラと輝いていた。