• IT企業だけどITについて学ばない

     南国市にあるI T企業『ソフテック』そこに集まるインターンシップ生は、情報システムや電子工学を専攻している。それをエキスパートから直接学べる絶好のチャンスとインターンシップに臨んだ彼らだったが…、実際はイメージと少し違ったようだ。
     「一番始めに大切なこととして『傾聴』という言葉を教えていただきました」そう言いながらインターンシップを振り返る宇野さん。「相手の話を聴くときに余計な先入観を持たず、常に相手への関心を示し、耳と目と心で全てを受け入れて聴く。相手が安心感を持って話したくなるような聴き方、それがコミュニケーションの第一歩だと教えていただきました」IT企業のインターンシップで冒頭に学んだのは、人とのコミュニケーションのあり方だった。一方で、その辺りを理由に『ソフテック』をインターンシップ先に選んだ松野さん。「自己分析やコミュニケーション能力の向上に力を入れているという話を聞きました。私は就職について企業や職種などの志望がまだはっきりせず、自分の適性や社会人として求められる力などを探れる機会になればいいなと思い参加しました」同社でインターンシップを担当する芳川さんは語る。「当社は情報処理のサービス業ですが、インターンシップでは情報処理に関することは一切行いません」
     知識・技術は授業や訓練で習得できる。しかし、それらを活かすには相手のニーズを引き出す傾聴力など、周囲と協調して効果的な仕事をするために必要な能力が問われる。そういった傾聴力や働きかける力などを、経済産業省は「前に踏み出す力」「チームで働く力」「考え抜く力」といった3つの要素に分類して、その総称を『社会人基礎力』と呼んでいる。
     『ソフテック』のインターンシッププログラムでは全日程の3分の2を前述のような自己分析・自己理解の時間に充当してこの『社会人基礎力』の育成に力をいれているのだ。

    力不足を痛感した7分間の自己紹介

     『傾聴』につづき、次のプログラムでもまた『社会人基礎力』が試された。森下さんは悔しそうに、こう振り返る。「7分間で自己紹介をするという課題だったのですが、とても難しかったです。自分のことを話すだけなのに話は続かないし、相手にも伝わらない。自分の伝える力の弱さを改めて痛感しました」自分の未熟さを知る、これもインターンシップで得た学びの一つだ。
     「発表後に話し方の癖や、立ち振る舞いについてお互いにアドバイスしあいました。他の人から見ると、自分では気付くことのできない見え方や感じ方があることを知りました」と森下さん。「他人は自分を写す鏡」自分では気付くことのできない自分が見えたのだ。

  • IT企業なのにアナログ!?

     インターンシップの最終ブロックでは、2つのチームに分かれ自由に研究テーマを設定し、それぞれが調査分析から成果発表まで仕上げていく。 井上さんはその過程を思い出しながら「テーマは自由、となるといろんな意見が出すぎて初日は話し合いだけで終わってしまいました。でも、『傾聴』を意識した話し合いは、とても充実していて、視野が広がるような感覚でした」
     また、調査の方法として街頭調査を選んだ川村さんのチームは、「テレビでよく見かけるので簡単だと思っていましたが、実際にやってみると、道行く人への声がけにすごく苦労したり、気軽に答えてもらえる質問の仕方が難しかったり、うまくいかないことばかりで…。どうやったらイメージ通りにできるのか、何がいけないのかを深く考える良い機会でした」と振り返る。研究成果の発表にもひと工夫。パソコンなどは一切使用せず、大きな模造紙にマジックで書き込んで発表するのがソフテックの伝統と語る芳川さん。「一人がまとめて作業するより、模造紙を囲んで皆が一緒に作っていく課程を経験してほしい。それに模造紙の限られたスペースに、どうやって自分たちの学びや気付きを表現するか、知恵を出し合って作り上げてほしい」
     あえてアナログな手法を選ぶ、ここも人との関わりがキーワードだった。

    業界研究ではなく自己分析に役立つ!?

     最後にインターンシップでの経験を井上さんにまとめてもらった。「最初は与えられた研修をこなしていくだけと聞いていたのですが、実際は自分たちで考えて作っていくという印象です。これは企業が人材に求めているものと共通している所じゃないかな、とも思えてきて、私自身の視点や考え方が少し変わったように思います」
     少し照れながらもさらに続ける。「おもしろいですね。成長している感覚があります。今回のインターンシップを通して、人と関わるうえでの自分の弱点に気付いたり、人とは違う個性や長所にも気付くこともありました。自己分析が出来たおかげで、これからの方向性が見えてきた感じです」