• 『教わる』から『自分で動く』へ

     「私は物性物理学を専攻しています。就職するにあたって、学び足りていないことはないかを確認する機会になると思いましたし、学校とは違う実践的な勉強ができるのでは思い、インターンシップに挑戦することにしました」
     専門分野を志す学生ならではともいえるそんな期待を抱きながら、ニーズに合う企業を見つけるため、マッチングセミナーに参加した。セラミック系材料の製造や研究開発、電気・電子分野で高い実績を評価されている宇治電化学工業は、まさに高町さんのイメージにマッチするインターンシップ先だった。『チャレンジ精神を全面バックアップ!』をテーマとする宇治電化学工業のインターンシップ。そのほとんどが、『社員とともに働く』時間に充てられる。製品開発や研究など専門知識が必要な分野でも、意欲があれば何でもトライできるという。
     学生のサポートを担当した川村進一さんはこう語る。「手を挙げれば任される。ここはそういう会社です。自分から『仕事を任されに行く』ことで、チャンスを広げる。インターンシップにおいても、手取り足取り教えるということではなく、本人の意志を最大限に尊重しながら危険のない範囲をお任せし、何事も自発的に取り組んでいただくことを重視しています」

    専門的な知識や技術を、いかに活かすか。

     「知識を学ぶことが目的の大学ではずっと受け身でいられたのですが、知識の活用が求められる企業の中では、なにごとも自分から行動しないと始まらないことを強く実感しました」
     やはりこの会社でも必要とされたのは知識の量だけではなく主体的な行動力。「人とコミュニケーションをとるのが苦手です」と言う高町さんは、その苦手意識を克服するために、取り組み目標を定めていた。「作業だけに集中せず、周囲を観察して気付いたことをメモする。疑問に思ったことをすぐに聞くのではなくて、一度自分なりに考察してみる。それでも答えが出せなかったら質問するようにしました。それから、お世話になった方の顔と名前を必ず覚えることで、人間対人間の関わり方ができるように意識して行動しました。すごくシンプルなことのようですが、思った以上に和やかなコミュニケーションがとれました」
    「さらに」川村さんからも共通する話題が出た。「インターンシップの折々で学生さんに問います。これまで何を念頭に取り組みましたか?その成果はどうでしたか?明日からはどうしますか?やらされるのではなく、自分で決めて取り組み、真剣に向きあってもらうことで、学問以前に人として大事なことが見えてくる」
     専門的な知識や技術が問われる業界であっても、人との関わりを軽視しては仕事ができない。人類の繁栄のために活かしきる力があってこその専門力ということだろう。

  • 周りにいる人たちに自然と意識が向かう

     今回のインターンシップには、高町さんがまったく想定しなかった刺激があった。それは、一緒にインターンシップに参加することになった、大学院に通う松井一貴さんの存在。そして、同社ですでに社員として活躍している大学の先輩の存在であった。「私はこれまで、計画を立ててものごとに取り組むといったことがあまりなくて、どちらかと言えばのんびり構えていました。でも松井さんを実験室で見かけたとき、きびきびしているなぁと感じて…、正直焦りました」
     インターンシップのなかで協力して実験を行う機会はなかったようだが、自分とは違うアプローチで研修に取り組む松井さんから学ぶところが大きかったようだ。 「一日の優先順位を組み立ててから研修に臨むようになりました。実験に取りかかる前にも、一度シミュレーションして計画してから行動に移すよう努力したり…仕事が終わってからも、やり残しはなかったかなど、振り返ってチェックするようにしました。これは、大学に戻ってからも実践したい」
     また、同じ大学出身の社員の姿は、高町さんの将来像にも影響を与えたようだ。「入社してからそんなに経っていないのに、周りから頼られている様子で、凄いなぁと思いました。私も将来は周りの期待に十分応えて何でも任せられる、信頼される存在になりたい」と聞かせてくれた。
     最後に、これからインターンシップを迎える後輩たちにメッセージをもらった。「今思えば、学内での自分は毎日、同じような実験をただ繰り返していたように感じます。専門性を高めること以上に幅広い知識も必要ですし、何より人とコミュニケーションすることの大事さを痛感しました。皆さんもぜひ研究室から一歩を踏み出してみてください」
     時として専門性の高い学問は知識偏重に陥りやすい。社会に出てからそれをどう活かすのか…そのイメージを具体化させることで、さらに修得すべき幅広い能力が明確なものとなる。どんなことでも受け入れる、しなやかな心構えでインターンシップに臨むことで、新しいステージが見えてくるかもしれない。